CHAPTER 04

UNIFICATION OF HUMANKIND

貨幣・帝国・宗教

UNIFICATION OF HUMANKIND

農業革命以降、人類は無数の小さな文化圏に分裂し、それぞれが独自の言語や神話を育んできた。しかし、鳥瞰図のように数千年の歴史を俯瞰すると、歴史の矢には明確な一つの方向性があることがわかる。 それは「統一」への強力なベクトルである。かつて地球上に散在していた数万の独立した世界は、数千年をかけて合流を繰り返し、今日では地球上の全人類が事実上、単一のグローバルな社会体系に組み込まれている。

最強の征服者、貨幣

この人類の統一を推進した最大の原動力の一つが「貨幣」である。言語や宗教が異なっても、そして互いを激しく憎み合っていても、人間はお金という共通のフィクションの前では容易に協力する。 貨幣の本質は、金や銀といった物質的な価値ではなく、人間の想像力の中にある「相互信頼」である。私たちが紙切れや電子データを受け取るのは、地球の裏側にいる見知らぬ誰かも、これを価値あるものとして受け取ってくれると信じているからに他ならない。

宗教は人々に「同じ神を信じること」を要求し、帝国は「同じ王に従うこと」を要求するが、貨幣はただ「他人が貨幣を信じていること」を信じるだけで機能する。 貨幣は、人類がこれまでに発明した中で最も普遍的で、最も寛容な相互信頼のシステムである。しかしその反面、人間のあらゆる価値観を価格という単一の尺度に還元し、共同体や伝統すらも解体していくという冷徹さを併せ持っている。

帝国という溶鉱炉

人類の統一を強力に推し進めた第二の力は「帝国」である。現代人は帝国主義という言葉に抑圧や搾取といったネガティブな印象を抱きがちだが、歴史上の多くの帝国は、異なる民族や文化を一つの巨大な法と経済の枠組みに統合する「溶鉱炉」として機能してきた。 ローマ帝国、漢帝国、大英帝国。これらは武力と流血によって支配を広げたが、同時に道路を敷き、度量衡を統一し、平和と繁栄をもたらすこともあった。

征服された側もやがて帝国の文化、言語、インフラを吸収し、元の文化と融合させていった。今日、世界に完全に純粋で独立した文化など存在しない。 私たちが誇る「伝統文化」や「国民的アイデンティティ」の多くも、かつて彼らを征服した帝国主義的遺産が形を変えたものにすぎない。帝国は善悪という単純な尺度では測れない、歴史の巨大な統合装置なのである。

宗教という超人間的秩序

貨幣と帝国が物質的・政治的な結びつきを提供する一方で、何百万という見知らぬ人々の心を一つに束ねたのが「宗教」である。 宗教とは、超人間的な秩序(神や自然の法則など)に対する信仰に基づいた、人間の規範や価値観の体系である。古代の局地的なアニミズムから、普遍的な真理を説き他者への宣教を伴う宗教(キリスト教やイスラム教、仏教など)へと進化するにつれ、宗教は特定の部族や地域を超えて人類を統合する強力な接着剤となった。

神々を崇拝する伝統的な宗教の力は近代以降に衰退したように見えるが、超人間的秩序への信仰という本質は変わっていない。 現代における自由主義、共産主義、資本主義といったイデオロギーもまた、「自然法則」という名の超人間的秩序を信奉する、神を伴わない「新たな宗教」として機能し、世界を統合し続けている。

歴史の二次のカオスと幸福

貨幣、帝国、宗教の三位一体によって人類は一つのグローバルネットワークへと統合されたが、歴史が特定の方向(例えば人類の幸福)へ向かって必然的に進んでいるわけではない。 歴史は、自身の予測に反応して振る舞いを変える「二次のカオス系」であり、決して決定論的なものではない。キリスト教がローマ帝国を支配したのも、一握りのヨーロッパ人が世界を征服したのも、必然ではなく偶然の産物である。

歴史のダイナミクスは人類の幸福を目的としておらず、力を持つ文化やミーム(文化的遺伝子)が、個人の苦しみに関頓着することなく増殖していく。 歴史の過程を学ぶことは、過去からの因果関係の鎖を断ち切り、私たちの想像力を束縛しているものを明らかにし、未来に向けてより多くの選択肢を思い描くためなのである。